マンハッタンの不動産市場: 2025年第4四半期レポート

2026/1/29

【市場概要】不動産市場は「在庫不足」と「スピード勝負」の局面へ

現在の不動産市場は、大きな転換点を迎えています。今期の大きな特徴は、「在庫の減少」と「市場スピードの加速」です。

在庫数が4四半期ぶりに減少に転じる一方で、成約件数は5四半期連続で増加。物件が売れる速さ(供給月数)は過去10年の平均を上回り、非常に回転の速い市場となっています。

この状況を動かしている主な要因は2つです。

  1. 金利低下による「コープ」の復権:ローン金利の低下を受け、手の届きやすいコープ物件への需要が急増し、1年ぶりにコンドミニアムの成長率を逆転しました。
  2. 記録的な「現金購入」:依然として金利は高水準なため、富裕層によるキャッシュ買いが加速。特にコンドミニアムでは取引の約75%が現金という、過去最高水準を記録しています。

新築やラグジュアリー市場でも「深刻な在庫不足」が続いており、まさに「良い物件は即座に、かつ現金に近い形で動く」という、買い手にとっては決断力が試されるエネルギッシュな状況と言えるでしょう。

(参考;Elliman Report Q4-2025 Manhattan, NY Sales https://elliman.com/media/Manhattan_Q4_2025_63fbaed055.pdf )

【主な統計】在庫減と売上増による競争激化

売上の増加と在庫の減少が同時に発生したことで、市場の動きはより活発になりました。
現在の販売ペースで在庫が一掃されるまでの期間を示す「供給月数」は6.7ヶ月となり、過去10年間の平均(7.6ヶ月)よりも6.6%速いペースで推移しています。

金利と現金購入の二極化

  • 金利の影響: 2025年夏の初め以降、住宅ローン金利が0.6%以上低下しました。これにより、比較的低価格帯の物件が多いコープ市場が活性化しました。
  • 現金購入: 富裕層を中心とした「現金購入」の比率は依然として高く、市場全体で64.7%を記録しました。特にコンドミニアムでは74.4%に達しています。
  • 入札競争: 定価以上で成約した割合は7.5%で、長期的な正常範囲内(5〜9%)に収まっています。

コープ(共同住宅) –金利低下の恩恵を受け、売上がコンドミニアムを上回る

コープ市場は、1年以上ぶりにコンドミニアム市場の成長率を上回りました。

  • 売上: 前年同期比 +7.0% (1,461件)。これは2024年第2四半期以来、初めてコンドミニアムの伸び率を上回る結果となりました。
  • 中央値販売価格: 販売価格の中央値は $825,000 で、前年比 +3.8% 上昇しました。
  • 要因: 夏以降、住宅ローン金利が0.6%以上低下したことが、比較的低価格帯の多いコープ市場に強い追い風となりました。
  • 物件在庫: 2,697件となり、前年比で3.5%減少しました。

コンドミニアム – 記録的な「現金購入」比率が市場を支える

コンドミニアムは価格がわずかに調整されましたが、富裕層による現金購入が非常に活発でした。

  • 売上: 前年同期比 +3.4% (1,170件) の増加で、5回連続の増加となりました。
  • 中央値販売価格: 販売価格の中央値は $1,661,000 で、前年比 -0.2% とわずかに下落しました。
  • 現金購入の比率: 購入者の 74.4% が現金で購入しており、これは記録上2番目に高いシェアです。
  • 物件在庫: 3,190件となり、前年比で5.2%と大きく減少しました。

高級物件 – 在庫が過去15年で最低レベルに急減

高級物件市場では、高額物件(400万ドル超)の売れ行きが好調ですが、販売される物件のサイズが小型化したことで、統計上の価格は下落しています。

  • 売上トレンド: 400万ドル(約6億円)を超える物件の売上は前年比 +11.2% 増加し、それ以下の価格帯の伸び率(+4.8%)を大きく上回りました。
  • 中央値販売価格: 販売価格の中央値は $6,038,000 で、前年比 -7.5% となりました。
    ※この価格下落は、販売された物件の平均面積が4.7%縮小したことにより、1件あたりの価格も安くなったことが主な要因です。
  • 物件在庫: 前年比 15.2% 減少し1,090件となりました。これは過去15年間で最も低い在庫水準です。
  • エントリー価格: ラグジュアリー市場の基準となる価格(上位10%の最低ライン)は $4,200,000 でした。

新規開発 – 5四半期連続の売上増、在庫は2年ぶりの低水準

新築市場は売上の勢いが続いていますが、価格は調整局面に入っています。

  • 売上: 前年同期比 +12.6% (403件) と大幅に増加しました。5四半期連続の増加です。
  • 中央値販売価格: 販売価格の中央値は $2,285,000 で、前年比 -5.9% 下落しました。ここ数年の上昇傾向から一転、2度目の下落となりました。
  • 物件在庫: 前年比 13.3% 減少し、過去2年間で最低の水準となりました。
  • 市場シェア: 全取引の15.3%を占め、過去10年の平均(14%)を上回っています