経済状況:小売市場は景気逆風下でも堅調
2025年第3四半期、ニューヨーク市の小売市場は堅調を維持しました。オフィス出勤率の回復、公共交通利用者の増加、世帯所得の上昇が背景にあります。
・世帯所得:中間世帯所得は $109,800 に上昇(前期比・前年比ともに増加)
・人口動向:マンハッタン人口は引き続き増加、ただし前期比で増加ペースはやや鈍化
・観光動向:全体では安定、ただし国際旅行はやや減少
・消費者心理:インフレ懸念や労働市場の軟化により若干弱含み
・企業動向:AI導入やコスト削減の影響で新規採用のハードルは上がるが、大規模な雇用喪失には至らず
こうした中でも、地元小売業者は実店舗投資に対して依然として前向きで、ニューヨーク市小売市場の基盤の強さを裏付けています。

需給動向:マンハッタン小売在庫は歴史的低水準へ
・2025年、年初来で3,000,000平方フィート(約8.4万坪)以上のリーシングが成立
・在庫率(空き物件比率)は 12.5% に低下(前期比 -0.3%、前年比 -1.4%)
・主要11商業通りのうち、9通りで前年比低下、6通りで前期比低下
・注目エリア
ーマディソン街:過去5年間で在庫率 -21.8%
ー5番街アッパーサイド:前年比 +2.9%(新規物件と高額コストによる)
ーSoHo / ミートパッキング:ポストパンデミックの回復が進み、空き率圧縮(SoHo -16.8%、Meatpacking -8.7%)
・注目テナント動向
ー食品・飲食関連が全体の32.5%を占め、経験型飲食(カフェ/レストラン/ハイブリッド型)が高需要
ーアパレル・アクセサリーも23.8%で好調、特にSoHoとマディソン街で需要集中
価格動向:供給制約があるも賃料はやや軟化
・7エリアで前年比賃料下落、全体では前年比 -0.7%、前期比 -1.5%
・堅調エリア: フラットアイアン・ユニオンスクエア・ウエスト+3.7%、アッパーウエストサイド+5.2%
・賃料下落エリア:ローワーマンハッタン -5.9%、ミートパッキング -4.3%、5番街ローワーサイド -3.3%
・供給は逼迫、空室は残るため、テナントは柔軟な契約条件や手数料交渉を重視
サブマーケット別統計

まとめ/市場見通し
1.マンハッタンの小売在庫は歴史的に低水準、テナント需要は依然高い
2.飲食・アパレルなど体験型・ライフスタイル系テナントの需要が特に強い3.
3.賃料は地域によりやや軟化も見られるが、主要エリアの人気は維持
4.テナントは契約条件や手数料交渉を活用し、物件確保の戦略が重要
投資家・小売事業者への示唆
・優良立地は引き続き高需要で競争が激しいため、積極的なリーシング戦略が有効です。
・空室率低下を背景に、創造的な契約条件での交渉が差別化要素となります。
・飲食・アパレルを中心に、体験型小売やライフスタイル系テナントが今後の成長ドライバーとなるでしょう。
参照:Cushman & Wakefield 「Manhattan Retail Q3 2025」
※弊社で要約・翻訳