ニューヨーク市、特にマンハッタンの商業不動産市場は、オフィス需要の変化や小売市場の動向により、投資家にとって多様なチャンスと課題が存在します。
本記事では、オフィス市場・小売市場の最新動向、商業用物件の家賃計算のポイント、そして近年注目されている「オフィスから住宅へのコンバージョン」について、まとめました。
目次
1.マンハッタン オフィスマーケットの展望
(Credit : たびきぶんフォト)
(1) オーナー向けのポイント
・需要の回復と価格力の向上:ハイエンドで設備の整った物件は、需要の回復とともに賃料の引き上げが可能です。
・大規模テナントの更新需要:供給が限られる中、大規模テナントは更新を選択せざるを得ない状況です。
・ビルトインスペースの需要:テナントは初期投資を避ける傾向があり、ビルトインスペース(内装や設備込み)の提供が求められています。
(2) テナント向けのポイント
・立地選択の柔軟性の必要性:供給が限られる中、大規模テナントは立地選択の柔軟性を持つ必要があります。
・競争の激化:需要が高まる中、競争が激化し、サブリーススペース(転貸借契約)の供給も減少しています。
・価格の調整機会:一部の物件では、オーナーとの交渉により価格調整の機会が生まれています。
(3) 市場の動向
・需要の広がり:ミッドタウンの中心部では需要が高まり、他のエリアにも広がりを見せています。
・供給の減少:新規供給が限られ、ロークオリティー物件は市場に残り続けています。
・賃料の二極化:ハイエンドな物件では賃料が上昇し、ロークオリティー物件では賃料が停滞または低下しています。
2.マンハッタン 小売市場の展望
(1) オーナー向けのポイント
・ハイエンド物件の需要増加:ハイエンドな小売物件への需要が増加し、価格力が向上しています。
・柔軟な契約条件の提供:競争力のある契約条件や柔軟な賃貸条件が求められています。
・投資の再活性化:市場の回復により、小売物件への投資が再び活発化しています。
(2) テナント向けのポイント
・選択肢の減少:供給が限られる中、選択肢が減少し、競争が激化しています。
・競争の激化:特に人気エリアでは、競争が激化し、価格が上昇しています。
・新しい機会の出現:一部のエリアでは、大手小売業者の撤退により、新しい機会が生まれています。
(3) 市場の動向
・需要の強さ:2025年上半期において、マンハッタンの小売市場は強い需要を示しています。
・供給の制約:新規供給が限られ、供給制約が続いています。
・価格の上昇:特に人気エリアでは、賃料が上昇しています。
3.商業用物件の家賃と計算の基礎
(1) オフィスの賃料相場(2025年)
クラスAオフィスは$120〜$125/SFに達することもあり、特にミッドタウンのプライムエリアで需要が高まっています。
*リンク名オフィス分類クラスA~Cについて、下記リンクをご参照ください。
https://nami-newyork.com/manhattan-office-classes-rent/
(2)小売物件の賃料相場(2025年第1四半期)
マンハッタンの主要小売エリアでは、平均家賃が前年同期比で1.7%減少し、$659/SFとなりました。
【家賃の計算方法】
家賃(月額) = スクエアフィート(SF)単価 × 広さ ÷ 12
「Rentable(共有部含む広さ)」と「Usable(実際に使える広さ)」の差を考慮し、ロスファクター(約30%)を控除します。
例:1,000SFで$100/SFの物件の場合
1,000 × $100 ÷ 12 ≒ $8,333/月
Usable 700 SF換算(65㎡)、為替レート150円で計算すると月額約125万円
4.ニューヨーク市のオフィスから住宅へのコンバージョン(建物の用途変更)と投資機会
パンデミック後のオフィス需要減少を背景に、空室オフィスを住宅へ転用する「コンバージョンプロジェクト」が注目されています。市と州は住宅不足解消と不動産市場活性化を目的に、投資家・開発者向けのインセンティブを整備しています。
(Credit : Nami New York Property)
(1) 税制優遇と補助金
・421-g / 485-xなどの税控除プログラム:住宅転用で固定資産税の減免や控除を受けられる場合があります。
・低利融資プログラム:州や市による融資・保証で資金調達コストを抑制。
・グリーン建築補助金:エネルギー効率改善リノベーションに追加補助が可能。
(2) 投資収益性のポイント
・空室率の高さ(ミッドタウン中心で15%以上)により価格交渉余地が大きい。
・アフォーダブル住宅(低・中所得者向けの手頃な住宅)やミドルクラス向け賃貸需要が旺盛で、安定したキャッシュフローが期待できる。
・住宅化により稼働率と収益性が改善し、長期的な資産価値上昇が見込めます。
(3) 金融機関のスタンス
・商業ローンより住宅ローンのリスクが低いため、融資が積極的。
・コンバージョンはCMBS市場(商業用不動産担保証券)にとっても安定性向上につながります。
(4) リスク要因と考慮点
・建築規制の制約あり:ゾーニング変更や建築基準法への適合に追加コストが発生する。
・コンバージョン費用:住宅仕様への改修費が高額になる可能性。
・エリア選定:マンハッタン南部やブルックリン中心部など、需要の高い地域でないと投資効果が限定的。
まとめ
マンハッタンでは現在、44件のオフィスから住宅転用プロジェクトが進行中で、総面積は約1,520万SF。最大で約17,400戸の新規住宅ユニットが供給される可能性があります。税制優遇など政策支援により、投資家にとって魅力的な機会ですが、市場動向や政策変更リスクを考慮した慎重な検討が必要です。