アメリカ不動産投資家にとって強力な味方となるのが「1031エクスチェンジ(1031交換)」です。
これは、投資用不動産を売却した際に発生する譲渡益税(キャピタルゲイン税)の支払いを、新しい不動産への買い替えによって繰り延べできる制度です。
税金を一度に支払わず、資金を次の物件へ効率的に移すことが可能になります。
(Photo credit: Towfiqu Barbhuiya)
1031交換の基本的な流れ
①売却する物件(例:アパート)
売却代金は投資家本人が直接受け取らず、Qualified Intermediary(仲介機関)へ預託します。
②交換候補物件を指定(45日以内)
③新しい物件を購入(180日以内)
④税金の支払いは繰り延べ
キャッシュを守りながら資産を次の物件に移動可能です。
基本ルール
1.対象物件
・投資用・事業用不動産のみが対象(賃貸物件、商業ビル、オフィス、土地など)
・自宅や別荘など個人利用の不動産は対象外
2.類似資産(Like-Kind Property)
・「不動産同士」であれば種類は自由
例:アパート → 商業ビル、土地 → 賃貸物件
・アメリカ国内の不動産同士であることが原則
3.期限(Strict Timeline)
・45日ルール:売却日から45日以内に交換候補を指定
・180日ルール:売却日から180日以内に新規物件の取得を完了
※両方を守らなければ1031交換は無効
4.資金管理
・売却代金を投資家本人が直接受け取ることは禁止
・Qualified Intermediary(仲介機関)が資金を管理し、新規物件購入へ充当
5.税務上の扱い
・売却益にかかるキャピタルゲイン税を繰り延べ可能
・永久に免除されるわけではなく、将来売却時に課税対象になる可能性あり
6.外国人投資家の特例(FIRPTA税)
・外国人(Non-U.S. Resident)が売却する場合、原則として売却価格の15%が源泉徴収されます(FIRPTA)
・Form 8288-B(Withholding Certificate申請)を事前にIRSに提出すると、源泉徴収を免除・減額可能
・1031交換を計画する場合は必須手続き
FIRPTAの源泉徴収を免れる主な書類
①Form 8288-B「Application for Withholding Certificate」
- 売却時にFIRPTAの源泉徴収を免除または減額してもらう申請書
- 通常、Qualified Intermediaryや弁護士・会計士と連携してIRSに提出
②Withholding Certificateの取得
- IRSが承認すると、売却代金から即時に15%源泉徴収されるのを回避可能
- 1031交換で税金を繰り延べ、資産を効率的に成長させるために非常に重要
まとめ
(Photo credit: Jason Briscoe)
1031エクスチェンジは、投資用不動産の売却益にかかる税金を繰り延べながら、資産を効率的に次の物件へ移動できる強力な制度です。
対象物件や期限、資金管理などルールは厳格ですが、正しく活用すればキャッシュフローを守りつつ、不動産ポートフォリオの拡大や資産運用の最適化に大いに役立ちます。
特に外国人投資家の場合は、FIRPTAの手続きやWithholding Certificateの取得が不可欠です。事前に信頼できる仲介機関や専門家と連携し、計画的に進めることが成功のポイントと言えます。