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SOHOとは
ニューヨークのSOHOとは South Of HOuston Streetの略=”ハウストン道りの南側”という意味で、1960年代から活発なアートとギャラリー文化の拠点となり、SOHOと略して呼ばれるようになりました。
それ以前に栄えていたロンドンのSOHOを意識していたと言われています。
現在のSOHOは、高級ブランドブティックや、お洒落なレストランやカフェが立ち並ぶ世界のトレンドの発信地として知られています。
又、セレブやエグゼクティブが好んで住むエリアとなっており、物件価格もニューヨーク市内トップレベルです。
SOHOの歴史
19世紀、このエリアは家賃が安く、軽工場・倉庫街でした。
天井が高く窓が大きいので光がふんだんに入り込み、アート制作やギャラリーとして使用することに適していたことから、芸術家が多く住み始めました。
当時は商業用エリアだったので住居として使用するのは違法でしたが、1970年頃に用途地域が変更し、住居として使用可能となりました。それを機に富裕層が住み始め、高級ブティックやレストランの進出により家賃が高騰し、芸術家は他のエリアに移住せざるを得なくなりました。
キャスト・アイアン建築とは
SOHOは世界で最も多くのキャスト・アイアン建築が残っているとして、歴史保存地区としても知られています。
また、アメリカの歴史建造物にも登録されています。
キャスト・アイアン(鋳鉄製)建築とは、19世紀にイギリスより伝えられた建築法です。
鋳鉄は鋳造性に富み、型に流し込んで複雑な形状も容易に作ることができ、又、比較的安価に入手することができたので当時随分流行りました。
外観の特徴は窓が大きく、柱が美しく装飾されています。
後から外側に非常階段も取り付けられています。
よくニューヨークのドラマや映画に登場しますね。
SOHOのキャスト・アイアン歴史保存地区:北はWest Houston~南はCanal Streetまで、西はWest Broadway~東はCleverland Plまでのエリア。
このエリアにおよそ250ものキャストアイアン建築が存在します。
ぶらりと散策しながら上を見上げると、美しい建物が数多く存在するのに気が付きます。
出典:NYC gov.
488 Broadway
The Haughwout Store ホーウアウトストア
築:1856年
建築家:ジョン・P・ゲイナー
SOHO歴史地区で最も古く、最も有名なキャスト・アイアンの建物です。
当時最も有名な鋳造工場である、バジャーズ・アーキテクチュラル・アイアンワークスによって鋳造されました。
銀とガラスの輸入業者で、高級シャンデリアと手描きの陶磁器の製造業者であるE. V.ハウアウトのデパートとして建てられました。
又、翌年に最初の実用的な乗用エレベーターが店内に導入されています。
メアリー・トッド・リンカーン(リンカーン元大統領の妻)は1861年5月16日にこの店を訪れ、ホワイトハウス用で使用する為の陶磁器一式を購入しています。
壮観な外観は、ヴェネツィアのサンマルコ図書館に似ています。
元々はビクトリア朝の人が「トルコのドラブ」と呼んでいた砂色のパテ色を塗っていましたが、実際にはベネチアの石造りの建物のように見えたに違いありません。
ブロードウェイとブルームストリートに沿って精巧な窓が92窓あり、キーストーンアーチは、縦溝流路付きコリント式の柱で支えられています。
385 West Broadway
築:1856年
建築家:ジョン・B・スヌーク
19世紀後半に、P&G.ロリヤードの家族経営の会社が、嗅ぎタバコ&タバコビジネスを成功させるための倉庫として、ジョン・スヌークに建設するよう依頼した4つの建物のうちの一つ。
鋳鉄製の1階が控えめなレンガ構造で、最小限の装飾が柱に施されています。
広い内部スペースでは、バージニア州とウェストバージニア州のタバコを受け取り、保管するために使用されていました。
1870年以降、ブルックリンとジャージーシティの工場でタバコから噛みタバコを製造していました。
由緒あるロリヤード社は、現在はロウズ社(Loews Corporation)の一部門ですが、その起源は18世紀半ばに最初のピーターロリヤードがフランスからバージニアに移住したときから始まっています。
500 Broome Street
築:1874年
建築家:チャールズ・メッタム
この建物は5か月足らずで建築されました。
複数の鋳鉄片が地元の鋳造所で加工され、馬車で建築現場に輸送された後、ボルトで固定して構造の前面や側面を簡単に形成することができたからです。
ブルームストリート沿いの腰の高さ程にある段差は、馭者が馬車より商品を積み降ろしする為に作られました。現在では、大型トラックが荷下の為の幅寄せをした際に接触し、鋳鉄が破損してしまっている建物が多いです。
476 Broome street
築:1873年
建築家:グリフィス・トーマス
石の特徴を上手く模倣したキャスト・アイアン建築。
他のキャスト・アイアンの建物と同様、正面部分は金型から大量生産されました。1階の柱には、精巧な装飾パターンから作られたコリント式の柱があります。この建物が違う色で塗色されたら、石造りに見える事でしょう。
469 Broome Street
Gunther Building ガンタービル
築:1872年
建築家:グリフィス・トーマス
1972年、この倉庫はブルームストリートで住宅用ロフトに改造された最初の建物でした。
この建物には、ファサードをより平坦にし、従来の鋳鉄の建物と区別すべく珍しい湾曲にした入り口があります。外側は落ち着いたオフホワイトの色合いで塗装されており、石造りのように見えます。
各フロアにある2つの2,500平方フィートのロフトは、当時それぞれ15,000ドルで販売されました。
453 Broome Street
築:1873年
建築家: グリフィス・トーマス
ブルームとマーサー通りの南西の角にあるこの建物は、1818年設立の由緒あるWelcome Hitchcock&Co.のかつての本社でした。この会社は主に葬儀用品を販売していました。
イタリアの神殿のような堂々とした威厳と品格があり、各フロアを分離するしっかりとしたコーニスと、手すりを備えた華やかな窓の装飾が目を引きます。
11 Mercer street
築:1871年
建築家:F.E. グラエ
喧噪としたキャナルストリートから北にマーサーストリートに入ると、典型的なソーホーの街並みとなります。 ほとんど全ての建物は1870年以前に建設されています。
鉄格子のシャッターとダッチドアが原型まま残されています。
47 Mercer Street
築:1872年
建築家:ジョセフ・M・ダン
この建物は、キャスト・アイアン建築構造の典型的な例です。標準的なレンガの壁は側面を支え、 鋳鉄製の柱でファサードの重量を支えています。前面の大きな窓は、現代の高層ビルのガラスカーテンウォールのようです。
19世紀半ばまでは、大きく平らなガラスの製造はコストがかかりすぎていました。しかし、 板ガラスを作る機械がヨーロッパで開発後アメリカで改良され、手頃な価格の板ガラス窓がこのタイプの建築を可能にしました。
10 Greene Street
築:1869年
建築家:ジョン・B・スヌーク
この建物の正面は、非常階段によって前面が隠されています。
1911年ワシントン・スクエアパークの東側にある仕立て工場で火災が発生し、ドアにカギがかかっていた為閉じ込められていた146人が死亡しました。
それを機に1915年、厳しい消防法が制定されました。
1913年10月1日より前に建てられた工場は(2つの内部階段吹き抜けがある建物は免除)外部に非常階段の設置が義務付けられました。
オフィス、倉庫、工場として機能するソーホーのロフトスペースも影響を受け、内部に階段吹き抜けが1つしかない狭い建物は、新しい法律に準拠するために金属製の非常階段を設置しました。
28 Greene street
築:1873年
建築家:アイザック・F・ダックワース
複雑なブラケットと 窓の周りの精巧な額縁が—印象的です。